【ふくしまの酒/金の系譜・下】「新しい日本酒」初心者に照準

全国の中小規模の酒蔵で、安価な「普通酒」から高価な「特定名称酒」(吟醸酒・純米酒など)への転換が進む。本県も同様で、近年は全国新酒鑑評会で酒質の高さを示してきた。だが酒質の競争は全国的に激化しており、差別化も求められている。
「20~40代女性と30代男性はフルーティーですっきりとした飲み口を好む」。東邦銀行と日本政策投資銀行が2021年公表した日本酒の調査結果では、消費者の日本酒の好みについて、男女別、年代別で細かく分かれている点を挙げ、消費者の好みに合わせる販売戦略の必要性を提案した。
「日本酒が苦手な人も飲みやすく、若者や女性が日本酒と出合う間口になる」と話すのは昨年創業した南相馬市の「ぷくぷく醸造」代表の立川哲之さん(29)。クラフトビールの技術を掛け合わせた日本酒を追求するファントムブルワリー(施設を持たない醸造所)だ。
ホップの苦味が溶けあう新感覚の日本酒などを販売し、本県の"新しい日本酒"として注目を集める。立川さんは「酒どころ福島の伝統を大事にしながら、南相馬に根付く酒造りをしていく。福島の日本酒に新風を巻き起こすことができれば」と意気込んだ。
「シンプル」に訴求
日本酒初心者を丁寧に迎えたい―。末廣酒造(会津若松市)は若者や女性をターゲットにした新ブランド「末廣シンプルシリーズ」を開発した。「あまい すえひろ」「さっぱり すえひろ」「あまずっぱい すえひろ」の3種類を段階的に発売し今月出そろった。
ポイントは見た目で味や香りが想像できること。日本酒をあまり飲まない人の「何を飲んだらいいか分からない」という声が基になった。「シンプル」と銘打ったが、担当者は「日本酒愛好者の拡大や業界の盛り上がりに貢献したい」とした。
同酒造会長の新城猪之吉さん(72)は「うまい酒を造っても、飲んでもらえなければだめだ。酒蔵は消費者に寄り添っていかなければならない。そういう時代になった」と先を見つめた。消費者ニーズが変化する中、酒蔵の知恵と工夫が試されている。
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この連載は国分利也、坪倉淳子、安達加琳が担当しました。
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