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【2008.05.23】
乙字ケ滝(須賀川市・玉川村)//悠久の流れ 芭蕉も感動//
小林隆次さん
小林隆次さん
春、夏に清掃活動
  乙字ケ滝周辺の環境美化に汗を流しているのが玉川村の竜崎老人会。春と夏の定例の清掃作業をはじめ、トイレなども定期的に清掃している。
 滝の近くに住む前会長の小林隆次さん(84)は少年時代から滝を見続けてきた。「昔はアカハラなどの魚が上っていくのが見えた」と振り返る。歴史的背景を踏まえ「かつては乙字ケ滝にサケやマス、アユが遡上(そじょう)し、それを殿様に献上していたという記録が残っている」と話す。
乙字ケ滝 《mapクリックで詳細mapが表示されます》

阿武隈川にかかる唯一の滝「乙字ケ滝」。その雄大な流れは松尾芭蕉も句に残した 東北道須賀川ICから国道118号を南東へ車で約20分

  阿武隈川にある唯一の滝で須賀川市と玉川村を結ぶ国道118号の境にかかる。石英安山岩の断層を流れ、落差は約5メートルと小ぶりなものの、水かさを増したときに約100メートルの川幅いっぱいに水が流れ落ちる様子が「小ナイヤガラの滝」とも称され、1990(平成2)年に「日本の滝百選」に選ばれている。
 名称は、水が「乙」の字の形をして流れ落ちることに由来するとされ、「増水時の流れの形」と「側面から見た断層の形」の2つの説がある。
 1689(元禄2)年には俳人松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で須賀川から郡山へ向かう途中に立ち寄った。芭蕉は当地で「五月雨の滝降りうづむ水かさ哉」の句を詠み、雄大な滝の流れを目の当たりにした感動を残している。
 その句を刻み込んだ句碑が右岸の滝見不動尊御堂の傍らに建立されているほか、河岸には芭蕉とともに随行の曾良の石像もたたずみ、今もその足跡をたどることができる。
 一方、左岸の乙字ケ滝遺跡は同市最古の遺跡で、約2万年前の石器や石おのなどが出土した。江戸時代は阿武隈川の舟運最大の難所といわれ、北側岸壁に堀割工事をして船を通した運河の跡があり、往時をしのぶことができる。
 かつては滝一帯が景勝地であると同時に、修験場や信仰の地でもあった。現在は駐車場を備えた公園として整備され、春には桜が咲き誇り、松並木が風情を醸し出す。自然が生み出した悠久の流れが静かに来訪者を迎える。
 

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