手、足先に多い悪性黒色腫
【皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)】皮膚の表皮基底層に存在する色素細胞(メラニン細胞)から出現するものと、真皮層に存在する色素性母斑細胞が悪性化して発症するとされています。
皮膚のメラニン細胞はヒトの皮膚の色を規定するメラニン色素を産生して、地球上に到達する日光紫外線から体の細胞を守る大切な役目をしています。メラニン細胞は皮膚ばかりではなく、目の中の虹彩にも存在し、われわれの目の色を表し、角膜を通過して網膜に到達する光の量を自動的に調節して、まぶしさを防いでくれています。
また、脳にも存在します。この細胞がたくさん集まって色素を産生した良性腫瘍(しゅよう)が、いわゆる「ほくろ」です。これらのメラニン細胞が「がん化」して、「しみ」のように黒く拡大したり、盛り上がってきたりしたら「悪性黒色腫」です。日本人では末端黒子型といって、手、足の先にできることが多い。
【腫瘍の特徴】一般にABCD法で、良性の「ほくろ」と鑑別されます。すなわち、非対称性(Asymmetry)に増殖し、その辺縁が不整(irregular Border)であり、色の濃さが一定ではない(Color variation)、発疹(ほっしん)は6ミリ以上の直径(lesional Diameter)をもつ腫瘍であるとされています。
最近はデルモグラフィーといわれる、レンズを用いた圧迫拡大法でみると、このABCDがより鮮明になり、より正確な診断が得られるとされています。診断の決め手は小さく組織を採って顕微鏡で見ることですが、腫瘍の転移を促すことがあるため、手術直前に行います。
【治療】できるだけ早く手術的に切除することです。手術での切除組織の病理学的検査から5年生存率の予後を推定することができます。この「がん」は転移しやすく、転移例では化学療法、放射線療法を行いますが、残念ながら根治させることはできません。
(県医師会員・郡山市)
=次回掲載3月5日
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