早期の肝炎治療で予防
肝臓がんは、大きく肝臓から発生する原発性肝がんと転移性肝がんに分けられます。原発性肝がんは、わが国では1980(昭和55)年ごろから急激に増え始め、現在では肺がん、胃がん、大腸がんに次いで死亡数が多く、年間3万5千人の方が亡くなっています。
2005(平成17)年の統計では、本県のがん死亡数5797人のうち、原発性肝がんによる死亡数は448人(7.7%)と報告されています。原発性肝がんの約95%が肝細胞がん(肝がん)ですので、今回は、肝がんについてお話したいと思います。
わが国における肝がんの原因は、C型肝炎ウイルス(HCV)70%、B型肝炎ウイルス(HBV)15%とされ、全体の85%が肝炎ウイルスに関連したものです。これら肝炎ウイルスは、共に血液を介して感染しますが、それぞれに特徴があります。
HCV持続感染者は、日本では約200万人存在するといわれ、その多くが1992(平成4)年以前に感染した方です。HCVに感染すると約70%の方が慢性化し、20〜30年の経過で約60%の慢性肝炎の方が肝硬変へ移行します。肝がんの発生は、肝病変の進行に伴って増加し、肝硬変では年率6〜7%で発がんすると報告されています。
一方、HBV持続感染者は約150万人存在しますが、80〜90%の方は無症候性キャリアで肝がんを発症し難いとされています。慢性肝炎や肝硬変へ進展すると肝がんが発生するリスクが高まり、HCVと異なり初期の慢性肝炎から発がんすることがあります。従って、肝がんの予防のためには、早期の段階で肝炎を治療することが大切です。
これら肝炎は自覚症状が乏しいため、輸血など過去に感染のリスクがあった方は、まず保健所や県の委託医療機関での肝炎検査をお勧めします。また、これら肝炎に罹患(りかん)している方は、ウイルスを排除するインターフェロン治療の医療費助成制度も整備されていますのでぜひご利用ください。
次回は、肝がんの治療について解説します。
(県医師会員・福島市)
=次回掲載3月19日
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