触れて気付くのは困難
腎臓にできる腫瘍しゅようには良性腫瘍、悪性腫瘍がありますが、約90%は悪性腫瘍、いわゆる腎がんです。発生率は人口10万人当たり8〜10人程度で、年齢は40歳以降、特に60代に最も多く発症するといわれています。
症状は古典的には血尿、腹部腫瘤しゅりゅう(腹のしこり)、疼痛とうつうとされていますが、腎臓は後腹膜腔くう(背中側)にあるため、自分で触れて異常に気付くことは困難です。このような症状が認められる場合には、がんはかなり進行しています。
現在では健康診断の検尿で血尿(尿潜血陽性)を指摘され、精密検査(特に超音波検査)で発見されたり、他の病気の精密検査中に偶然発見されることが多くなっています。また、転移による症状(骨転移による骨折、肺転移による咳せき、血痰けったんなど)や発熱、全身倦怠けんたい感、食欲不振、体重減少などで発見されることもあります。
検査では超音波検査、静脈生腎盂じんう造影、CTスキャン、MRI検査、骨シンチグラフィーなどを行い、がんの周囲への広がり、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無を調べます。
治療は転移がない場合は手術による摘出が原則です。抗がん剤による治療は有効なものはなく、放射線療法も転移による疼痛の緩和を目的に行われることがありますが、腎がんそのものの治療としては有効ではありません。肺転移にはインターフェロンなどの免疫療法が有効といわれていますが、その効果も20〜40%程度で高いものではありません。
最近、新たな治療として分子標的治療が行われています。この治療はがん細胞を殺す治療ではないので有効率は低いものの、腫瘍の増殖を抑え、生存期間を延ばすことで注目を集めています。
5年生存率は、がんが腎臓にとどまっていれば70〜90%、遠隔転移がある場合には10〜30%程度まで低下するといわれており、やはり早期発見、早期治療が大切です。健康診断や人間ドックを積極的に受け、異常があればなるべく早く専門医を受診しましょう。
(県医師会員・会津若松市)
=次回掲載6月4日
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