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がんと向き合う
〔 33 〕 亀岡浩 医師    
【 膀胱がん 】
80%は比較的早期に発見

 膀胱(ぼうこう)がんで亡くなった俳優松田優作さん。なぜ、彼の病状がそこまで進行してしまったのか。「膀胱がんの治療」=「膀胱摘除」のイメージが、俳優である彼に、治療を躊躇(ちゅうちょ)させてしまったのかもしれません。膀胱がん治療の難しさの一つは、排尿というQOL(生活の質)上、重要な機能がかかわる点といえます。
 膀胱がんの発生は膀胱の内側から始まります。80%の症例は比較的早期に表面のみで見つかります。この場合、治療は尿道から電気メスを挿入し、腫瘍(しゅよう)のみの切除となります。70%程度で再発の可能性があるため、膀胱内へ薬を注入したり、繰り返し同様の切除を行ったりして膀胱の温存を最大限に試みます。
 進行した20%の症例では、がんが膀胱壁へ深く入り込み見つかります。治療は電気メスによる切除に加え、投薬や放射線治療を行い、膀胱を温存できる場合もあります。しかし、時期を逃してしまうとがんが体中へ広がってしまうため、標準的な治療は膀胱全摘とされています。
 膀胱を摘出した場合、その後の尿の出し方として、今までは腸でおなかに尿の出口を作る方法、尿管をそのままおなかに出す方法が一般的でした。これらは「ストーマ」といって、人工肛門(こうもん)のような装具をおなかに張り付ける必要があります。
 最近は腸で膀胱を作り、尿道につなぐ方法も行われてきています。この方法は尿を尿道から出せるのでとても便利ですが、本当の膀胱ではないので、尿意などの感覚はなく、尿の漏れなどに対処が必要です。
 さらに、膀胱摘除の方法も進歩しています。小さな切開創から拡大鏡を使用したり、腹腔(ふくくう)鏡といって、小さな穴から鉗子(かんし)のみで操作する方法も行われています。これらの方法は手術に伴う出血や痛みを軽減し、術後の回復を早めることができます。
 もし、優作さんが最近の治療法を知っていたらどうされたでしょうか。きっと、がんと向き合い、その運命は変わったに違いないと思うのですが…。
 (県医師会員・郡山市)
=次回掲載7月2日


 



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