女性と70代に多く発症
【頻度や危険因子】胆嚢(たんの)は、お腹の中で一番大きな臓器である肝臓の下についている鶏卵よりやや大きめの袋状の臓器です。肝臓で作られた消化液の一つの胆汁を濃縮貯蔵しておき、食事時に収縮して胆汁の通り道(胆管)から十二指腸に分泌する働きをしています。
胆嚢の壁は3層に分けられます。内側にある粘膜から発生する悪性腫瘍(しゅよう)が胆嚢がんで、進行とともに内側にも外側にも育っていきますが、胆嚢には通常の消化管に認める粘膜の下の厚い層がないので外へ広がりやすいのです。
頻度は平成20年度の県の統計によると、がんによる死亡者中、胆嚢がんでの死亡者は男性では3587人中157人(4・4%)、女性では2376人中202人(8・5%)となっています。全国的にも胆嚢がんは女性に多く、男女比は1対2〜1対5であるといわれており、年齢は70代に多いようです。
8〜9割の症例に胆石がみられ、発がんの危険因子として考えられていますが否定的な意見もあります。その他の因子としては胆嚢炎、膵臓(すいぞう)から分泌される消化液の通り道である膵管と胆管との合流の異常などが知られています。また、粘膜にできた腺腫(せんしゅ)という良性のポリープが大きくなり悪性化してがんになることもあります。
【症状】初期には特に自覚症状はありません。 検診の採血で肝機能障害を指摘されたり、併存する胆石の痛み発作や胆嚢炎を契機に超音波(エコー)検査等で発見されることもありますが、無症状のまま進行し周囲の神経が侵されると右の上腹部の痛みや、胆管までがんが伸展すると眼球が黄色になる黄疸(おうだん)が出現して、便の色が白っぽくなったりしてきます。さらに大きくなると右上腹部に腫瘤(しゅりゅう)(シコリ)を触れるようになります。また、食欲不振、体重減少、全身倦怠(けんたい)感など、がんの一般的な症状を伴ってきます。
(県医師会員・福島市)
=次回掲載7月16日
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