【健康長寿・運動不足(2)】広まる職場運動 高齢で働く時代備え

 
フォーピースの床に示された歩幅はやや広め。「身体活動として有効な歩幅を、普段から確認することができる」と担当者は話す=福島市

 「タクシー乗務員の健康状態は、安全な運転に深くかかわる。運転中に心筋梗塞や脳梗塞を発症して意識を失ったら大変だ」。大和自動車交通(福島市)の取締役渡辺宣之さん(74)は、従業員の健康管理に力を入れる理由をそう語る。

 2016(平成28)年、従業員の健康のため積極的に取り組むことをうたう「健康事業所宣言」を行った。乗務員にこまめな運動のほか、定期的な禁酒や、禁煙を促すことを始めた。

 「体のキレ戻った」

 タクシー乗務員は仕事柄、長時間座ったままで体を動かす時間が少なく、腰痛は職業病だ。乗務員の男性(62)は会社の勧めで最近、待機中に背中をそらしたり、首を回すなどのストレッチを始めた。運動不足がずっと気になっていたが、今は休日に自転車で10キロほど走っている。男性は「体のキレが戻ってきた」と笑顔を見せる。

 業界全体で乗務員の高齢化が進んでいることも、健康管理に重点を置く理由の一つだ。大和は15年、定年退職の年齢を5歳延長して65歳にした。定年後に雇用延長で働く人も多く、70歳のドライバーもいる。「60歳を超えると、健康管理をしている人とそうでない人とで差が広がる。70歳まで働けるよう元気でいてほしい」と渡辺さんは語る。

 「健康経営」を掲げ、働く世代の運動不足を解消しようと対策を講じる会社が県内でも増えつつある。しかし「デスクワーク中心で動かない」「車移動中心で歩く機会がない」「運動に割く時間的余裕がない」などクリアすべき課題は多い。

 オフィスにグッズ

 オフィス用品を扱うフォーピース(福島市)の事務所には、立って会議を行うためのキャビネットや、座りながら自然と体の筋肉を使うバランスボールが置かれている。床には運動に効果的な、やや大股の歩幅が示してある。ストレッチを行うための壁もある。

 働きながら自然に身体活動を取り入れるための品々。フォーピースで取り扱っている商品を自社の従業員のために設置している。興味を持つ企業などの担当者が見学に来る。

 専務の菅沼裕さん(54)は「『社員の健康のために何かやらなくては。でも何をすれば良いのか』と戸惑う会社関係者は多い。オフィスを変えればすぐ社員の健康への意識が変わるわけではなく、継続が大事。健康を意識して働いてもらう取り組みは、さまざまな健康指標が全国平均と比べて下位にある福島では特に意義がある」と話す。