【健康長寿・過信(1)】4割弱が健診受けず 低い関心30代女性

 
「家事に追われる主婦も年1回は健診を受けてほしい」と話す土屋広見さん(右)=郡山市・土屋病院

 病気の予防や早期発見、生活習慣の見直しにも役立つ健康診断。自らの健康を過信せず、健診で定期的にチェックすることが重要だ。職場で義務付けられている定期健診のほか、受診者の任意で行われる人間ドックも健診の一種に含まれる。これらを健康維持に生かすにはどう活用すればいいのか。現状や県内の取り組みを取材した。

 「自分が大病をするとは夢にも思わなかった」

 中学校で体育教師をしていた高野尚之さん(73)=いわき市=は、若い頃から健康に自信があった。定期健診以外にも2年に1度は人間ドックに通い、不安な気持ちで行ったことはない。むしろドックの時に出る食事が楽しみで「どこの料理が一番おいしいか」で病院を決めていた。

 65歳の時、妻から突然「人間ドックに行ったら」と言われた。退職後の4年間は健診やドックから遠ざかっていた。妻の言葉に従いドックを受けると、結果は「胃がん」。翌週には胃と胆のうを全て摘出する大手術となった。手術も入院も初めての体験だった。

 それから8年。高野さんに再発はなく、元気に過ごしている。70歳を過ぎてからは「新聞への投稿が生きがいになった」と話す。

 「早期発見だったから命が助かった。健診の大切さを身にしみて感じている」

 家族優先、自分後回し

 厚生労働省の調査によると、全国で過去1年に健診を受けた人の割合は男性72%、女性63.1%で、本県は男性73.3%、女性65.4%にとどまっている。年齢別では女性の30代が特に低く、全国で56.2%、本県では63%。県内の30代女性で健診を受けていない人は、4割弱にも上っている。

 郡山市の土屋病院健診センター長補佐で、看護師の土屋広見さん(52)は「世代を問わず、専業主婦の受診が少ない」と指摘する。

 「核家族化が進み、病気の人が身近にいないためか、若い女性にとって病気は縁遠くなっている。そして50代になるとホルモンバランスは崩れ始めるが、子どもの進学や親の介護を優先して、どうしても自分の健康は後回しになる」

 土屋さんは30代前半、胸に約1センチのしこりを見つけた経験がある。当時は専業主婦で、土屋さん自身も健診を受けていなかった。ただ結婚前の20代に東京のがん専門病院に勤めた経験から、月に1度、セルフチェックをしていた。「悪性だったらどうしよう」

 不安に駆られ、すぐに細胞診(検体検査)を受けた。良性と分かり胸をなで下ろしたが、結果を待っている間の恐怖感を忘れることができない。

 土屋さんは「女性も年1回は健診を受けて」と呼び掛ける。「忘れそうなら誕生月に受けたり、結婚記念日に夫婦で人間ドックを受けるのも良い。男性は奥さんやお母さんの健康にも気持ちを向けてほしい」