【ぜんそく診療最前線】新しい検査法 簡単!一吹き...測定5分

 
ぜんそくの診断で行われる呼気NO検査の様子

 患者数が増加し、社会問題とも指摘される「ぜんそく」。本格的な花粉症のシーズンが近づいているが、花粉症などのアレルギー性鼻炎がぜんそくを悪化させることも少なくないという。2月のアレルギー週間に合わせ、県民の健康増進を目的に本紙と連携協定を結ぶ福島医大の呼吸器講座の柴田陽光教授と斎藤純平医師に、ぜんそくを巡る診療の最新の状況について寄稿してもらった。3回にわたって紹介する。

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 「ぜんそく」は、空気の通り道(気道)に炎症が起こることで、さまざまな刺激(アレルゲンや大気汚染物質など)に対して気道が敏感に反応して、発作的に気道が狭くなる病気です。刺激の原因としては、ダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどのアレルゲン物質によることが多いですが、原因が特定できないこともあります。これまでの疫学調査では、日本人の約1割が「ぜんそく」といわれており、患者数はここ30年で3倍にまで増加しました。しかも以前は、小児や若い人に多い病気とされていましたが、最近では、高齢になってから発症するケースも珍しくなく、高齢者の「ぜんそく死」が社会的な問題になっています。

 典型的な「ぜんそく」の症状は、発作性に繰り返すゼーゼー(喘鳴(ぜんめい))、咳(せき)、たん、胸苦しさで、夜間から朝方に強いのが特徴です。典型的な症状を訴える患者さんの診断は比較的容易ですが、全ての症状がそろうことは少なく、「2~3カ月咳が続いていて咳止めを飲んでも治らない」といった理由で医療機関を受診する患者さんも多いのが現状です。疫学調査の結果では、2カ月以上の長引く咳の50~70%は「ぜんそく」、または「咳ぜんそく」(咳だけが症状のぜんそく)と報告されています。

 「ぜんそく」を疑った時には、胸部レントゲン検査、呼吸機能検査、血液検査、痰(たん)検査などを行いますが、これら検査だけでは診断がつかない場合も多々あります。そこで、簡単で、苦しくなく、すぐに「ぜんそく」を診断できる検査法として、呼気中の一酸化窒素(NO)濃度を測定する方法が新たに開発されました(呼気NO検査)。福島医大では15年以上前からこの検査法を外来診療に取り入れて「ぜんそく」の診断の一助にしています。5年前からは県内の呼吸器内科専門医療機関でも利用できるようになりました。実際の測定にかかる時間は5分程度で、「ぜんそく」が疑わしい患者さんの約80%を診断することが可能であり、患者さんの検査への負担が格段に改善されました。(福島医大医学部呼吸器内科 柴田陽光教授、斎藤純平医師)