【健康長寿・地域ぐるみ(1)】「サイレントキラー」高血圧と闘う

 

 「これは何とかしないといけない」。7月下旬、福島市西部の吾妻学習センター。「吾妻地区健都(けんと)ふくしま創造推進会」に出席していた同市上野寺の男性(77)は、地域の健康課題に関する市の説明に衝撃を受けていた。「でも、どうすればいいのか」

 18地区ワースト

 市が示したのは、特定健診で収縮期血圧140以上、または拡張期血圧90以上の「高血圧」とされた市民のその地域全体に占める割合についてのデータ(2018年度)。吾妻地区は4人に1人より多い25.7%に上った。市内18地区のうち最も高い値で、出席者に驚きが広がった。

 高血圧になると血液が血管の壁を押す圧力が高まり、血管がダメージを受ける。放置すると脳卒中や心筋梗塞、腎不全につながる可能性が高まる。自覚症状はほとんどなく、ある日突然重大な病気を引き起こすため「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれる。

 福島市は全国平均と比べ、急性心筋梗塞など生活習慣病に起因する病気の死亡率が高く、県全体と同様に健康指標の改善が大きな課題になっている。吾妻地区健都ふくしま創造推進会は、住民自らが地域ごとに健康課題について話し合う会議として初開催された。

 なぜ、吾妻地区に高血圧の人が多いのか。「農業を営んでいる世帯が多く、そうした家では(塩分の高い)自家製の漬物を日常的に食べる。そのためではないか」。会議では血圧上昇につながる食塩の過剰摂取など、地域の食習慣による影響を指摘する意見が出た。

 実践踏まえ提案

 出席者は、吾妻地区みんなで取り組む健康宣言「吾妻地区健康元年宣言」の案を、それぞれ提出することになった。男性は考えた末、趣味でウオーキングを約30年間続けていることなど、自らの実践を踏まえて「みそ汁を1日1杯にしよう」「1日2キロ以上はウオーキングしよう」などと提案することにした。「みんなでこうしたことに取り組めば、『ワースト1位』は脱却できるのではないか」

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 県内市町村は、県民一人一人の健康意識の改革や生活習慣の改善に向け試行錯誤を続ける。県民の健康づくりを後押しする効果的な取り組みを探る。

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 場所確保、行政も知恵を

 住民が主体となり、地域が抱える健康課題に向き合おうという取り組みが動き始めている。

 19日、福島市上町の上町テラスの一室。笑顔でヨガの体操に取り組む参加者の姿があった。

 この場所は、市ガイドの会「愉快な仲間」などの市民団体が運営する健康ステーション。オープニングイベントとして、同会副会長の河野恵夫さん(78)を講師にヨガ教室が開かれた。

 健康ステーションは、県や市が健康づくりの取り組みについて情報発信を強めているのを受け、市民主体の活動の拠点として設置された。ヨガのほか太極拳などの教室も開き、楽しみながら体を動かしてもらおうという取り組みだ。

 約1時間の指導を終えた河野さんは、市民の健康づくりを応援しようと施策を進める行政側にこう問題提起した。「健康づくりの活動を広げようとしても、活動を行う場所を確保するのが大変だ。学校の空き教室の提供など、行政側も知恵を絞ってほしい」