【健康長寿・地域ぐるみ(2)】働き盛り男性...症状なければ無頓着

 
会社などに出勤する人たちが列をなす朝のJR福島駅東口。働き盛り世代の男性にいかに健康意識をもってもらうかが課題となっている=福島市

 「働く世代の男性にとって健康は二の次になりがち。こうした人たちにどうやって関心を持ってもらうかが、市民の健康づくりを進める上での一番の課題だ」。福島市保健所長の中川昭生さん(67)は強調する。

 中川さんは昨年4月、福島市の中核市移行に伴い新設された市保健所初代所長に就いた。専門は地域社会の健康課題を扱う「公衆衛生」。福島市に来る前は、島根県で約40年間にわたり県民の健康づくりに取り組んだ。

 島根では、町内会や公民館単位で展開する住民主体の健康づくり活動を重視した。「主体的に取り組むようになると、住民の健康意識は自然と変わってくる。行政が健康を巡るサービスを提供するばかりではなく、住民が『自分たちで健康づくりをしたいので、応援してくれ』と行政に求めてくるようになるのが理想だ」。健診を受けるよう住民同士で声を掛け合うなどの自主的な活動が広がった。

 女性は指標改善

 長年の取り組みの結果、島根の女性の健康指標は改善し、平均寿命は全国トップクラスになった。しかし男性は女性ほど改善しなかったという。中川さんは、地域単位の健康づくり活動に女性が積極的に参加したのに比べ、男性は参加が少なかったためだと考えている。

 男性、特に働き盛りの世代の男性にいかにアプローチするか。健康づくりを進める地域住民も頭を悩ませている。

 福島市西部の内町町内会の会長を務める斎藤雅彦さん(72)は、集会所で定期的に体操を行ったり、食事の塩分量に気を付けるなど、自らの健康に気を配る。だが、現役警察官だった働き盛りの頃は、健康にまったく無頓着だった。

 予想外の血圧「198」

 「顔が赤いですよ」。2007(平成19)年6月、郡山北署の副署長だった斎藤さんは署員からそう言われ、署内の血圧計に腕を通した。「198」。予想外に高い値を示した。強盗事件などで忙しく、睡眠時間も少なかった時期。「何の症状もなかったので、その時まで気付かなかった」。すぐに血圧の薬の服用を始めた。

 「30~50代の人たちにこそ、健康について考えてもらいたい」。経験を踏まえ、そう強く考えるようになった斎藤さんは今年10月の防災訓練で、非常食の炊き出し訓練として減塩のカレーライスや豚汁を参加者に食べてもらうことを計画している。健康講座などには足を運ばないが、防災訓練には参加する働き盛りの男性たちに、健康的な食生活について考えてもらう機会を提供したいと思っている。