過剰摂取は「塩中毒」 福島医大・石田教授、福島で減塩サミット

 
石田隆史教授

 「人間の体は、生涯にわたる過剰な塩分の摂取に耐えるようにはできていない」。福島市で22日開かれた「減塩サミット2019in福島」では、減塩の必要性を福島医大循環器内科学講座の石田隆史教授が詳細に説明した。塩分を過剰に摂取することで生物として「不自然」な状態に陥り、その状態が続くことによる「ひずみ」が生活習慣病として現代人の体に生じていると指摘した。

 石田教授は、昔ながらの生活を守る海外の先住民の「無塩」生活などを紹介しながら、現代人が塩分の過剰摂取状態に危機感を持たない現状に警鐘を鳴らした。「ここにいる皆さんは元々健康意識が高い人たち。家族やご近所に、きょうの話を広めてほしい」とも述べた。

 減塩サミットの冒頭、県の取り組みについて語った井出孝利副知事は「働き盛りが健康になることが大事だ」と、会社の職場への働き掛けを行っていることなどを紹介した。

 【基調講演】 食事から徐々に改善

 高血圧の原因は遺伝や加齢、塩分の取り過ぎなどの生活習慣が挙げられるが、生活習慣が理想的であれば遺伝的に高血圧の体質を持っていても、年を取っていっても血圧は上がりにくいことが研究で分かっている。

 日本人は1日に男性で11グラム、女性で9グラムの塩を取る。皆さんに最も言いたいのは、実は塩は「ほとんど必要ない」という事実だ。生命維持に必要なのは1日わずか1.5グラム程度。ほとんど必要ないばかりか、一定量以上の摂取は毒であると頭にたたき込んでほしい。

 塩分の取り過ぎは動物として非常に不自然な状態で、取り過ぎても大丈夫なようには体はできていない。ケニアのマサイ人は塩を取らず、牛乳に含まれる塩分だけで暮らす。彼らには塩を意味する言葉さえない。本来、塩はこれだけで十分だ。

 塩を過剰に取っても悪影響が出るのはずっと後なので、現代人は取り過ぎてしまう。ほとんど「塩中毒」であり、改善が難しい手ごわい生活習慣だ。

 減塩を進めるためには、食事の塩分を徐々に減らしていくのが有効だ。塩は加工食品などに含まれているので現代社会で塩を全く取らないというのは不可能であり、「減塩のし過ぎ」を心配する必要はない。新鮮で良い食材を意識して使うようにすれば、食材そのものがおいしいので調味料が少なくて済み、減塩につながる。この点、食が豊かな本県は恵まれている。

 塩は本来少ししか必要ないということを周知し、家庭単位ではなく社会全体で減塩を実践し、できるだけ子どもの頃から減塩を習慣づけることが重要だ。

 いしだ・たかふみ 広島市出身。広島大医学部卒。広島大病院循環器診療科講師や国立病院機構広島西医療センター臨床研究部長などを経て2016(平成28)年4月から現職。58歳。