野菜と運動、動脈硬化防ぐ 鎌田實氏講演、福島でシンポジウム

 
大勢の来場者が健康について考えたシンポジウム=9日、福島市

 福島市で9日に開かれた「県民が健康になるためのシンポジウム2020」には約280人が来場した。「健康長寿の実現が復興の後押しになる」。訪れた県民は、鎌田實諏訪中央病院名誉院長の言葉を受け、健康づくりの実践を誓った。

 ◆減塩大きな鍵 生きがいや目標深く関係

 長野県が健康長寿になった理由の一つは減塩。福島は(昔の)長野と似ていて、食事の塩分が濃い。意識と生活習慣を少し変えれば、海があっておいしい魚が取れる福島は長野よりも健康になるのが早いはずだ。

 厚生労働省が推奨する1日当たり350グラム以上の野菜を食べているのは長野だけだ。福島は心筋梗塞が日本一多いが、動脈硬化を起こさないためには野菜、運動が大切。野菜の抗酸化力が動脈硬化を防ぐ。福島の人が福島の野菜を食べ、全国の風評を蹴っ飛ばして健康長寿日本一になることが一番の復興。周りが福島を見習う。

 ジューサーかミキサーで野菜ジュースを1杯飲めば、もう220グラム。あと130グラムはサラダや煮物で達成できる。野菜ジュースが苦手な人は、具だくさんのみそ汁が良い。高野豆腐や卵を入れればタンパク質も取れる。具だくさんなら減塩効果もある。まずは野菜350グラムを頭に入れてほしい。

 冬の間は(鎌田式)スクワットやかかと落としなど、家の中でやれることをやる。何かしながらでよい。また、統計的に健康長寿に一番影響を与えていたのは、生きがいだ。生きがい、目標を持つことは長寿に深く関係している。

 介護保険のお世話になる3人に1人は、フレイル(虚弱)が原因だ。口の虚弱は誤嚥(ごえん)性肺炎のきっかけで、死因の上位を占める。「パタカラ運動」で予防してほしい。引きこもって外に出なくなる社会的虚弱も重要だ。出掛けてください。外に出れば1個や2個、必ず良いことがある。

 1時間座ったら2分立ち上がって軽い運動をすると、死亡リスクが4割減るといわれている。ほんのちょっとやるかどうか。福島の子どもは肥満傾向にあるが、大人がメタボだ。子どもは大人の背中を見て育つ。誰かがやりだすことが大切だ。

 かまた・みのる 東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野県の諏訪中央病院で健康づくり運動を進め、現在は名誉院長。71歳。