【老老介護と認知症】介護現場、コロナの影 減少する交流の場

 

 収束の気配が見えない新型コロナウイルス。感染拡大の影響は高齢者を中心に、介護の現場にも及んでいる。

 福島市の福祉施設。「お久しぶりです」「お元気でしたか」―。声を弾ませ高齢者らが施設へ入っていく。施設で6月下旬に開かれたのは認知症の人と家族の会県支部福島地区会のイベント「オレンジカフェ風」。認知症の人や家族らが集まり交流する。以前は毎月開催していたが、新型コロナの影響で、イベントが開催できたのはこの日が約3カ月ぶりだった。

 イベントでは参加者たちが、ミニ講座を挟んで1時間近く歓談。ギターの生演奏で歌を歌い交流した。

 「この日を楽しみにしていたんです」。参加した同市の女性(73)は笑顔を見せる。認知症の夫(76)は施設に入所していて、女性は1人暮らし。緊急事態宣言中はほとんど外出せず、介護の悩みを誰かに相談することができなかった。

 感染対策で夫との面会も制限され、直接会って健康状態が確認できない毎日。「不安が多く、自分も精神的に病んでしまいそうだった」。そんな日々を振り払うかのように、参加者と交流を楽しんだ。

 開催にためらい

 県によると、オレンジカフェ風のような「認知症カフェ」は県内44市町村、136カ所(昨年4月時点)で行われている。「介護は孤独で精神的なつらさがあるが、交流することで気持ちが楽になる。すごく大切な場所」。妻(76)を介護する県内在住の男性(73)はそう話す。

 ただ、コロナ禍の感染リスクを考え、関係者はこれまで通りのイベント開催をためらう。

 オレンジカフェ風もマスク着用などを徹底。7月に開催したイベントでは「密」を避けるため、参加者を制限して2部制にした。「交流できる場は必要だが、参加者の中から感染者が出たらと思うと...」。運営責任者(80)は不安をのぞかせる。

 感染対策を徹底

 介護施設などを研究する「人とまちづくり研究所」は5月、全国の介護関係団体などを対象に、新型コロナが介護や高齢者支援に及ぼす影響を調査した。

 その結果▽施設利用者の外出や交流機会の減少(68%)▽ADL(日常生活動作)の低下(51%)▽認知機能の低下(46%)―などの回答が多く、「特にない」は4%だった。認知症専門医が対象の日本認知症学会の調査でも、認知症の人や家族らの集まりが「開催されていない」は81%に上った。

 介護者の孤立防止に欠かせない交流の場。未知のウイルスとどう向き合うべきか。同研究所代表理事の堀田聡子慶応大教授はこう指摘する。「介護事業所や地域のサロンなどでは感染対策を徹底して高齢者の不安を軽減することが大切。認知症の人や家族がサロンなどに出掛けたくなる工夫や働き掛けも大事ではないか」