糖尿病、遠隔で保健指導へ 福島県がモデル事業、腎機能低下防ぐ

 

 福島県は糖尿病を患った人の腎機能低下を防ぎ、人工透析による治療を予防するため、情報通信技術(ICT)を活用したモデル事業を11月にも始める。スマートフォンなどを活用して遠隔で保健指導を行い、新型コロナウイルス禍での効果的な生活習慣の改善策を検証する。

 県によると、糖尿病に伴う腎臓病患者には、市町村の保健師による食生活の指導などが行われるが、新型コロナの感染拡大後、対面による指導が難しくなり、小規模の自治体では保健指導を担う人材の不足などの課題もある。

 モデル事業では、委託先の民間事業者の保健師や栄養士がスマホやパソコンなどを通して約2カ月間、患者を集中指導し生活習慣の改善を図る。本年度は浜通りと中通り、会津の各方部の1自治体程度を予定。慢性腎臓病の重症度を表す指標が一定以上の国民健康保険被保険者約20人を対象とする方針。地域の薬剤師とも連携して服薬指導なども行い、効果を高める。民間委託により自治体の負担軽減につながるかどうかも検討する。

 県は保健指導の実施後に、患者の生活習慣が改善したかを調べ、事業効果を検証する。課題を洗い出すとともに効果が出た場合、県内自治体と取り組み内容を共有することも想定している。

 県によると、人工透析による治療を受ける場合、1人当たり年間500万円の医療費が必要となる。国民健康保険被保険者の1人当たりの医療費は増加傾向にあるため、国保運営上、被保険者の人工透析を回避することが喫緊の課題となっている。モデル事業により、国保加入者の医療費の適正化につながることも期待されるという。

 県外の自治体では同様の取り組みが一定の効果を上げているとの事例があり、県は「まずはモデル的に行い、効果を見ながら工夫する余地があるかどうかも検証していきたい」(国民健康保険課)とした。