人類の進化と歯の退化

 

 食生活変化で歯の欠如も

 人類は約500万年前に猿人としてチンパンジーの類と分かれて、直立二足歩行によって独自の道を歩んできました。そして時代とともに猿人→原人→旧人→新人と進化(変化)していきます。その進化の中で明らかなことは脳の発達ですが、歯や顎(あご)はどうなってきたのでしょうか。

 二足歩行により手が自由に使えるようになり、指先からさまざまな刺激が脳に伝わり、情報や知見がもたらされ脳が発達しました。その中で人類の偉大な発見は、火と道具の使用といえるでしょう。

 それらにより、食生活が変わってきました。食べ物を調理することができるようになる、つまり食物の消化の第1段階を手で調理するというステップを取ることによって、人類の噛(か)む力は弱くなってきました。当然ながら使う部分は発達し、使わない部分は退化する過程をたどることになります。

 そのような経過を経て、現代では親知らずが生えない、あるいは欠如する人が増え、また前歯や小臼歯がないという人もいるなど、歯は退化傾向にあるといえるでしょう。人類の進化型(あるいは退化型といってもよいかもしれません)の行き先を考えた場合、著しく歯の数が少ない人類の誕生の可能性も否定できないかもしれません。

 私たち日本人の平均寿命は80歳を超えるようになってきました。これは、脳、言い換えれば知の力によるものといってよいかと思います。しかし、その代償として歯や顎は退化してきました。

 歯の平均寿命は、歯の種類により異なりますが50年程度です。歯の平均寿命をできるだけ人類の平均寿命に近づけることが、将来にわたって人類が豊かな食生活と強い生命力を維持していくために大切なことだと思われます。

(県歯科医師会)