「インフルエンザ」 口腔ケアで発症率減

 

 インフルエンザの流行を迎え、マスク着用や手洗い、うがいの励行という予防策がPRされています。

 インフルエンザウイルスは呼吸に伴って鼻や口から気道に入ります。口腔(こうくう)内の常在菌は500種以上いるとされ、病原性は弱く、唾液の洗浄や抗菌作用、歯磨きによって細菌数は抑えられています。しかし口の中の健康状態がインフルエンザ感染の重症化と関係があるということは、あまり知られていないようです。

 口の中の雑菌は、その代謝産物としてプロテアーゼやノイラミニダーゼなどの酵素を排出しています。プロテアーゼはタンパク質を破壊し、不潔な状態であると粘膜の弱い部分からウイルスが侵入しやすくなります。特に歯周病の程度が進行しているほど組織のダメージが大きいので罹患(りかん)しやすくなります。

 雑菌が多いとタミフルやリレンザの効きが悪くなるので、罹患したら治癒を早めるためにも口腔ケアは大切です。奈良県歯科医師会による調査では、介護施設の高齢者に対して歯磨きや舌磨きなど口腔ケアを徹底すると、インフルエンザ発症率が10分の1に激減したとの報告があります。ウイルスの侵入をブロックするための鼻呼吸や外出時のマスク、戻ったらうがいやブラッシング、歯科医院でのメンテナンスなどを行うことが、健康な冬を乗り切る秘訣(ひけつ)かもしれません。

 (県歯科医師会)