「口腔機能低下症」 高齢者の飲食に支障

 

 「口腔(こうくう)機能低下症」という疾患をご存じだろうか。口腔機能がさまざまな要因により低下している疾患のことで、主に高齢者が対象となる。

 高齢者のお口の特徴はなかなかイメージできなくても、食べている様子は思い浮かぶのではないだろうか。入れ歯のため食べるのに時間がかかり、硬い物は食べづらく、水を飲んだときによくむせるなどと想像するかもしれない。

 実際、正月になると高齢者が餅を喉につまらせたというニュースをよく耳にする。高齢になると唾液の分泌量が少なくなり、咀嚼(そしゃく)力や嚥下(えんげ)機能も低下し、食べ物がのみ込みづらくなるからである。

 2018(平成30)年4月から口腔機能低下症の検査が保険診療に導入された。〈1〉口腔清掃状態〈2〉口腔乾燥〈3〉咬合(こうごう)力〈4〉舌口唇(ぜつこうしん)運動機能〈5〉舌圧(ぜつあつ)〈6〉咀嚼機能〈7〉嚥下機能―の検査があり、それぞれに基準値がある。三つ以上で機能低下に該当すると、口腔機能低下症と診断される。検査結果を受けて治療や訓練で機能を向上させることが目標だが、加齢やさまざまな疾患の影響によって、低下しつつある機能をなるべく維持させることが重要である。

 口腔機能が低下すると食べるのに支障が出るため、お口の健康は全身の健康と直結する。高齢期までおいしく食事できるよう、口腔疾患の進行予防と同時に、口腔機能も低下させないようにしよう。

 (県歯科医師会)