地球外から注ぐ「宇宙線」

 

 放射線の体への影響は、放射線を浴びたか浴びていないか、ではなく、どれくらい浴びたか、という「量」の問題です。原発事故によって汚染は起きましたが、我々は事故が起こる前からある程度の量の放射線を自然界から浴びていました。

 土の中や岩に含まれている放射性物質から天然の放射線が出ていることはよく知られていると思いますが、同じように放射線が空からも降り注いでいることが発見されたのは今から約100年前のことです。

 その当時、科学者たちは標高の高い場所に行ったり、パリのエッフェル塔に登ったり、気球を飛ばしたりして、放射線の強さを測りました。すると地上から離れるにつれ、地上からの放射線は弱くなるはずなのに、逆に計測される放射線は強くなり、地上5000メートルでは地上の約10倍近くになることを発見します。

 オーストリアのヘス博士が地球の外から放射線が来ていることを突き止めたのは1912年のこと。宇宙から地上に降り注ぐ放射線のことを宇宙線と言い、それによる被ばくは世界平均で年間0.39ミリシーベルトほどです。