放射線影響、遺伝よりがん

 

 放射線を浴びると、これから生まれてくる世代に影響があるのではないかと心配される方がおられるかもしれません。しかし、今回の事故による放射線によって、次世代への遺伝的な影響を危惧する必要はありません。

 放射線による遺伝影響について、1927年にショウジョウバエで放射線によって世代を超えて影響が出ることが発表されます。翌年に植物でも、そしてその数年後には紫外線でも突然変異が起きることが発表されます。

 そのような状況の中で、広島・長崎での原爆投下、そして第2次世界大戦後には繰り返し行われた核実験のため、世界中に放射性物質が降り注ぎ、それらの放射線による遺伝的な影響の可能性は多くの人にとって関心事となっていきました。

 しかしその後、実験対象がハエから人間にずっと近いマウスになり、長時間かけて放射線を受ける場合はダメージが小さいことが分かります。また、広島・長崎の状況が調べられ、遺伝的影響は見つかりませんでした。

 そのような経緯から、国際的な放射線に関する委員会の中でも、放射線による人間への影響は、遺伝よりもがんである―ということが確立していったのです。