がん登録、患者数知る試み

 

 震災後の私たちの健康の状況を知りたいとき、病気の人数が増えた・減ったといった多くの数字が登場します。これらの数字は分かりやすい半面、その意味を知るにはいくつかの注意が必要です。

 がんの実態を知り、今後の対策を行うためには、いろいろな地域でのがん患者さんの人数や状態を知ることは非常に重要です。この試みは「がん登録」と呼ばれ、国内での先駆けはお隣の宮城県で、1950年代に始まりました。その後、広島市や長崎市でも行われ、徐々に他の地域にも広がっていきました。2016年から制度が強化され、今ではすべての都道府県で行われるようになっています。

 ただ、がん患者さんの人数を知るのは簡単なことではありません。それぞれの病院で診断されると登録されることになっていますが、人手不足の病院にとって、すべての患者さんの細かい登録が、困難な作業であることは想像に難くありません。精度を高めるために、カルテだけではなく、保健所や市区町村のデータも使われますが、その手間も膨大です。

 また登録は県ごとに行われますが、患者さんは県をまたいで複数の病院にかかることもしばしばですし、住所が変わることもあります。同じ患者さんなのかを確認する必要もあります。

 このがん登録の精度がより高くなるように、さまざまな取り組みがなされています。がん患者さんの人数は、どこか一つの病院から単純に集計が出てくるといった類いのものではありません。