発がん性物質 「量」が重要

 

 20世紀の初め、ウサギの耳にコールタールを塗り続けると、そこに「がん」が発生することが見つかります。それをきっかけに、発がんに関するさまざまな実験が行われ、がんを引き起こす可能性のある物質が多く見つかります。

 その結果、1958年にアメリカでは「デラニー条項」というものが制定されます。これはリスクゼロを目指し、がんになることが分かった物質については、どんなに微量でも禁止するというものでした。

 その当時、「がん」を引き起こす物質のほとんどは、天然ではない合成化学物質であると考えられており、この人工の物質を禁止さえすれば、がんを抑えられると思われていたのです。これは、リスクがあるなら使いたくないというわれわれの一般的な感覚とは合います。

 しかし事実はそう簡単ではありませんでした。その後、例えば赤みの肉やコーヒーにも発がん性があることが分かります。われわれの周りのありとあらゆるものに発がん性があり、もし禁止すると何も食べるものがなくなるのです。

 そのため、どの程度の「量」なら安全かを定めて、基準値を作り管理していく。という方向性に変わっていきます。放射線に関しても同じく「量」の問題なのです。