生活により決まる基準値

 

 健診や病院での採血結果を見ると、どれにも基準値が書かれています。自分の結果がその基準値の中におさまっていないと何かしら良くないのではないかと思いたくなります。しかし、基準値は正常・異常を区別したり、特定の病気があるかを判断したりするための値ではありません。

 同様に放射線にもさまざまな基準値が設定されています。しかし、この基準値も放射線によって何らかの病気になるかどうかや、安全と危険の境ではないのです。

 日本の食品の基準値は1キロ当たり100ベクレルです。既にこの値を超えることがある食材は特定のものに限られ、ほとんどで検出されなくなっているのはご存じの通りです。

 その一方で北欧のとある地区ではチェルノブイリの事故後、汚染の起こりやすいトナカイの肉を食べることが伝統的にも生活的にも重要であり、基準値が日本の60倍の1キロ当たり6千ベクレルと定められて、受け入れられたような例もあります。

 基準値が決められる上において、身体の安全性は優先的に考慮されるべきことですが、それだけではなく、私たちの生活や地域の文化、考え方に根差して決められるものです。