影響の見積もり大きめに

 

 低線量の放射線の影響は分からないというのは、少ない量の放射線で身体に「どのような影響が将来あるか皆目見当がつかない」ということではありません。低線量被ばくの影響はあるともないとも完全に証明するのは難しい、しかし、あったとしてもごく小さいということを意味しています。

 その一方で、「放射線の管理」の上では、完全に証明できない、ゼロとは言えないかもしれない、というだけでは話が進みません。低線量被ばくの影響の大きさについて、何か具体的な数字を恣意(しい)的でも決めておかなければならなくなります。

 広島・長崎での調査では、少ない放射線の量が健康に影響するかどうかは、はっきりしませんでした。その一方で、たくさんの放射線の量を浴びた場合には、がんのリスクが高まったことが分かっています。

 このような高線量で分かっている放射線のリスクが、100ミリシーベルト以下の低線量でも、放射線の量に比例して起こると「仮定」して、放射線は管理されています。高線量で分かっていることから、低線量の影響を推定しています。つまり、放射線の量が半分なら、影響も半分になる。量が10分の1なら、その影響も10分の1と「仮定」しているのです。

 このような仮定が科学的ではないという批判もあります。しかし、「放射線の管理」の上では、影響を大きめに見積もっておいた方が安全だという考えから、放射線防護の分野では国際的に採用されています。