放射線リスクあると仮定

 

 「放射線の管理」の上では、低線量被ばくの影響はあるともないとも完全に証明するのは難しい、というだけでは話が進みません。たくさんの放射線(高線量)を浴びたときに分かっている放射線のリスクが、100ミリシーベルト以下(低線量)でも、放射線の量に比例して起こると「仮定」して放射線は管理されています。

 放射線の量が半分なら、影響も半分、量が10分の1なら、その影響も10分の1と「仮定」する。つまり、たくさんの量の放射線を浴びたときに分かっていることを、少ない量の放射線のときにも当てはめてリスクを考えるという手法が取られているのです。

 これは、管理のためにつくられた、あくまで仮定です。そのため、別の科学の分野から分かっている知見と合致しないような場合がいくつもあります。

 例えば、いくつかの特定の「がん」は、少ない放射線の量では、どうやら起こらない(がんを引き起こす放射線の量に、しきい値が存在する)ことが分かっています。

 放射性物質を含む蛍光塗料を摂取したことによる骨のがんや、数十年以上前に使われていた特定の造影剤による肝臓がん、動物実験でのいくつかの血液がんや卵巣がんがその例です。少ない放射線では影響が見えないのです。私たちが放射線によるダメージを修復したり、新しい細胞に入れ替えたりできるからだろうと考えられています。