基礎知識が誤解を減らす

 

 この連載は最初、放射線の身体への影響は、放射線があるかないかではなく、その受けた量の問題であること、そして放射線と放射性物質の違いの説明から始まりました。

 線香花火に例えると、中心の火種が赤く燃え、周りにバチバチと火花を散らします。そのうち火花は弱まり、最後に火は消えてしまいます。火種が放射性物質、火花が放射線でした。そして、その火花を散らすことができる能力のことを放射能といいました。

 懐中電灯とその光に例えると、懐中電灯が放射性物質で、そこから出る光が放射線、光を出す能力のことを放射能といいました(場合によっては、放射性物質のことを放射能と表現することもあります)。

 アルファ線、ベータ線、ガンマ線は放射線の一種、それらの放射線を出すセシウムやヨウ素、ラドンやカリウムは放射性物質でした。

 原発事故によって周辺環境にまき散らされたものは、放射線ではなく放射性物質、私たちの身体が浴びてしまうのは放射性物質ではなくて放射線、食べ物に含まれていないかを調べているのは、放射線ではなくて放射性物質です。

 基礎的なことではありますが、このような知識が未来の偏見や誤解を減らし、生活を前に進めるための何らかの支えになってほしいと願っています。いつもご支援、ご指導くださる皆さまに心より感謝申し上げます。

 (福島医大放射線健康管理学講座主任教授・坪倉正治)