「10年生存率」未進行は98%

 

 甲状腺は、首の真ん中からやや下(のどぼとけの下)にある、10~20グラムぐらいの小さなチョウの形をした臓器です。

 甲状腺の一部にしこりができる病気のうち、悪性のものができることを甲状腺がんといいます。甲状腺がんは顕微鏡による見た目によって、いくつかの種類に分類されますが、放射線と関係する甲状腺がんの多くは「乳頭がん」と呼ばれる種類のがんです。

 一般的に医療では、がんの悪性度を示す方法の一つとして、「5年生存率」という指標が用いられます。がんと診断された患者さんのうち、診断から5年後にご存命の方の割合のことを指します。やや露骨な指標だと感じられると思います。

 国立がんセンターの報告では、全てのがん全体で「5年生存率」は6割前後です。しかしこの数字はがんの進行具合や、年齢、治療法でも異なります。例えば大腸がんは、全体では約7割に対し、進行していない場合は約9割、進行している場合は約2割と報告されています。

 その一方、甲状腺乳頭がんはその予後(治療後の経過)の良さもあり、5年ではなく10年生存率という指標がよく使われます。報告にもよりますが、55歳未満の場合の「10年生存率」は、進行していない場合は98%からほぼ100%、進行している場合でも85%から95%といわれています。