甲状腺がん、低年齢少ない

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から2020年レポートとして、最新の報告書が発表されました。

 今回の報告書の中で委員会は、事故後に甲状腺がんが多く見つかっていることについて、恐らく放射線被ばくとは関係がないであろうとコメントしています。

 その理由としていくつかが挙げられています。一つ目は、甲状腺の被ばく量が少ないこと。二つ目は、事故後に見つかっている甲状腺がんの多くが、放射線によるものとしては、事故後あまりに早くに見つかっていること、でした。

 三つ目として、今回の原発事故後に甲状腺がんが見つかっている方の事故時の年齢が、小児の中でもより年上(5歳未満ではなく、15歳前後など)に偏っているということです。

 チェルノブイリ原発事故後に甲状腺がんと診断された方の多くは、事故時に5歳未満でした。放射線の影響を考えるのであれば、より年齢の低い方に影響が大きくなる可能性が考えられます。

 今回の事故後の甲状腺がんが、年齢の低い方に少なく、より年上の方に多く見つかっておられることは、放射線の影響から考えると逆です。これも今回の事故後に見つかった甲状腺がんが放射線被ばくとは関係なさそうであると考えられる根拠の一つです。