「早期発見・治療」にも注意

 

 県民健康調査の一つである「甲状腺検査」は、震災時点で福島県に在住していた18歳以下の全県民が対象の、現在の甲状腺の状況を見守るための検査です。検査を受けることは強制ではありません。そのため、検査を受けるかどうかについては、それぞれがさまざまな情報から判断していただく必要があります。

 大切な情報の一つとして、甲状腺がんは、全てがそうではないものの、進行がゆっくりのものが多いということがあります。そのため、将来に日常生活や命に影響を及ぼすことのないがんを発見し、治療する可能性があることを紹介しました。

 このことに関連して有名なのが韓国での事例です。

 韓国では1999年より政府ががん検診に力を入れ、乳がんや子宮がん、大腸がんなど、いくつかのがん検診が無料または非常に安価に受けられるようになりました。そんな中、超音波検査による甲状腺のチェックも数千円前後で受けられるようになり、甲状腺の検査が多く行われるようになったのです。

 その結果、検査が増えた時期の前後約20年間に、甲状腺がんと診断された方の人数は、人口10万人当たりで15倍にも跳ね上がったことが知られています。その一方で、この期間に甲状腺がんで命を落とされた方の人数はほとんど変わりませんでした。

 早期発見・早期治療という言葉にも注意が必要な場合がある、ということを示す事例としても知られています。