トリチウムは水素の仲間

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。

 そもそも、水素は137億年前のビッグバンで宇宙とともに作られ、宇宙全体の質量の4分の3を占めています。そして、地球上の環境や私たちの体の中にある水素のほとんどが水として存在しています。水素イオンの濃度が高いことを酸性と言い、濃度が低いことをアルカリ性と言います。病院などで行う画像検査の一つであるMRIも、体の中の水素に外から刺激を与えて、その反応を見て体の中の画像を作る技術です。水素は私たちにとって最も身近な元素の一つです。

 その水素の仲間の一つがトリチウムです。水素は放射線を出しませんが、トリチウムは放射線を出します。全体の99・9%以上を占める水素に比べてトリチウムはごくごく微量にしか存在しません。これは私たちの周りにあるカリウムは放射線を出さない一方、その仲間であるカリウム40は放射線を出すのに似ています。

 水素自体は、陽子1個と電子1個でできていますが、トリチウムは陽子1個と電子1個に加えて中性子2個でできています。そのため、トリチウムは水素に比べて重いです。その一方で、水素とトリチウムの化学的な性質はほとんど変わりません。