身体への影響は量の問題

 

 トリチウムは放射性物質なので、放射線を出しますが、非常にエネルギーの小さいベータ線を出すことが知られています。エネルギーはセシウム137が出すベータ線の100分の1程度です。そして、エネルギーが小さいため、他の放射性物質から出るベータ線と比べて飛ぶことができません。空気中では1センチも進むことができません。

 このように、トリチウムの放射線は非常に弱いのですが、放射線による身体への影響はその量の問題です。非常に大量のトリチウムに曝露(ばくろ)した結果、死亡した事例も世界ではゼロではありません。

 古い一部の時計では、光る文字盤にトリチウムと蛍光物質を混ぜて使用しているものがあります。放射性物質が出す放射線(エネルギー)を蛍光物質が吸収し、そのエネルギーを光として放出するのです。蛍光物質へのエネルギーを、時計の「内側」の放射性物質から供給しているのです。

 このトリチウムの夜光剤を取り扱っている方で、何年間も大量のトリチウムに曝露された方に悲劇は起きました。その方は1年間当たり数十兆ベクレルのトリチウムに曝露されていたことが知られています。

 その一方、日本の雨に含まれているトリチウムは1リットル当たり1ベクレル程度、海水においては福島第1原発の近くの海域であっても、その10分の1程度(1リットル当たり0.1ベクレル程度)です。