8月から9月に多く発生
【日本脳炎とは】日本脳炎ウイルスによる脳炎で、高熱、頭痛、嘔吐(おうと)、けいれん、意識障害が主な症状です。感染した場合、脳炎を発症する割合は1000人のうち、1〜20人です。
いったん発症すると治療法はなく、20〜40%が死亡に至る病気といわれています。回復しても半数以上は脳に障害や麻痺(まひ)など重篤な後遺症を残し、特に年少児と高齢者では予後が不良です。
人からの感染はなく、豚で増幅したウイルスを蚊が媒介します。日本では主にコガタアカイエカで、馬やイノシシからもウイルスが分離された報告があります。
豚における日本脳炎ウイルスの感染状況(ウイルスに対する免疫抗体保有率)をみると、西日本を中心に広い地域で抗体陽性の豚が確認されています。
8月から9月に多く発生し、日本では南部から始まり、北部へと発生が移動しています。(北進現象)
南アジア・東南アジアでは年間1万人以上の患者が発生しています。日本では1960(昭和35)年以前には年間数千人の患者が発生していましたが、1967〜76年、小児および高齢者を含む成人に積極的にワクチン接種をしたことによって、劇的に減少し、現在では年間数人程度になりました。
【ワクチン接種の積極的勧奨の差し控え】日本脳炎ワクチン接種と急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の因果関係が否定できない事例が認められたため、2005(平成17)年5月、「現行ワクチンの積極的勧奨の差し控えの勧告」がなされました。希望者への接種は可能であるものの、現実的に接種は一時中断されていました。このため、ヒトの日本脳炎に対する抗体保有状況は2008年度の0〜6歳群でこれまでにない低い割合になっています。
小児の日本脳炎発症例が散見されています。2009年6月から乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが使用開始されましたが、2010年4月から第1期の接種勧奨が再開され、8月からは第2期に対しても接種可能となりました。
(県医師会会員・相馬市)
=次回掲載1月7日
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