MMR開発し公費負担を
【髄膜炎や難聴などの合併症には注意が必要】おたふくかぜウイルスが原因で発症するおたふくかぜは、流行性耳下腺炎とも呼ばれます。一年中見られる病気で、時に学校や幼稚園などでの集団感染もあります。大部分の患者さんは耳下腺(耳の下の唾液腺)や顎下腺(がっか)(顎の下にある唾液腺)が痛みを伴って腫れ、1週間前後で自然に治るため、軽い病気と考えられがちです。
しかし、このウイルスは全身の臓器や組織に影響を与えることも知られており、髄膜炎、膵臓(すいぞう)炎、精巣炎などを合併し、難聴になる人もいます。特に髄膜炎は合併頻度が高く、高熱、頭痛、嘔吐(おうと)が強いときには入院治療が必要となります。また難聴は年間500人ぐらいの患者さんに合併し、多くは片側性ですが高度な感音性難聴を来し、永続的な障害になります。思春期以降の男性では、精巣炎を起こして睾丸(こうがん)が腫大し、高熱と激しい痛みに苦しむ症例もありますが、それで不妊になることはまれです。
【1歳と小学校入学前の2回接種を】おたふくかぜに対する治療薬はなく、ワクチンの接種が唯一の予防法ですが、現在任意接種のため、まだ受ける人はあまり多くありません。発症すると7〜10日間休校しなければならないことや、髄膜炎、難聴などの恐ろしい合併症を起こす頻度が高いことを考えると、ぜひとも接種しておいてほしい予防接種の一つです。1歳になり、麻疹風疹(MR)混合ワクチンを接種した後に接種することをお勧めしますが、1回の接種のみでは完全に予防するには十分とは言えず、MRワクチンと同様に、小学校入学前にもう一度接種するのが良いと考えます。現在多くの先進国でMMR(麻疹、風疹、おたふくかぜ)ワクチンとして2回接種し、おたふくかぜの患者さんの発生が激減しています。日本でも副作用の少ないMMRのワクチンが開発され、以前のように公費負担で接種できるようになることを期待しています。
(県医師会会員)
(おわり)
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