夜、オシッコに起きる夜間頻尿の改善法

 

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 みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。大森中央泌尿器科・内科・外科クリニック(福島市)の横田崇先生の泌尿器科に関するお話です。
夜、オシッコに起きる夜間頻尿の改善法
医療法人
大森中央泌尿器科・内科・
外科クリニック
横田崇先生
福島医科大学医学部卒、米国スタンフォード大留学、福島医大泌尿器科講座助教授などを経て2005年、福島市に医療法人大森中央泌尿器科・内科・外科クリニックを開院、福島市医師会理事。
 
 

    

 もう2月です。1年中で最も寒い季節を迎えています。冬になるとオシッコに行く回数は増えます。北海道に住んでいる人のほうが沖縄の人に比べると排尿回数が多いという報告もあります。また寒い中オシッコに起きると血圧が一時的に高くなり、脳出血や心筋梗塞などを起こしやすくなります。夜、起きる時には羽織るものを着て、スリッパを履いて体を冷やさないようにしてトイレに行く用心深さが健康を保つうえでも大切ですよ。

 さて、1月号に続いて今月も夜間頻尿についてです。夜間頻尿の原因は(1)尿量が多くなること(夜間多尿)(2)膀胱にためられる尿が少なくなること(膀胱の容積が小さい)(3)よく眠れないこと(睡眠障害)の3つです。夜間頻尿という言葉から泌尿器科の病気を考えてしまいますが、そのほかにも図1に示す病気の一症状として頻尿になっている可能性があるのです。おのおのの病気に対して根本的治療を受けることが大切ですが、ここでは自分でできる夜間頻尿改善法についてお話します。

(1)夜間多尿  

 多尿が原因で夜間頻尿となっている人は意外と多いです。1月号で紹介した排尿日誌から1日2000ml以上の尿が出る人は多尿です。水分のとり方が多いことや塩分の過剰摂取が主な理由です。水分を多くとると血液がサラサラ流れ、心筋梗塞や脳梗塞の発症を予防できると多くの人は考えがちですが、過剰な飲水はただオシッコとなり排せつされるだけで、その予防にはなりません(図2)。むしろ夜起きることによってけがをする危険性のほうが問題なのです。1日排尿量が1000~1500ml位あれば体の中は脱水でも過剰でもない適量な水分状態と言えます。夜、オシッコに行く回数が気にならなければたくさん水分をとっても構いませんが、気になるようなら水分のとりすぎに注意しましょう。また、塩分のとりすぎは高血圧症の主な原因ですが、そのうえ夜間多尿をきたします。血液中の塩分濃度が濃くなると、それを一定の濃度に下げようとして体の細胞の中にある水分を血液中に送り出します。その結果、血管内の塩分の濃度は低くなりますが、反対に血液中の水分量が多くなるため、血管を押し広げ血圧が上がります。高くなった血圧の力を利用して、腎臓は塩分と水分を含む尿を作り出しますが、高齢者では腎臓の働きが弱くなっているため、昼間だけでは余分な塩分を出すだけの十分な尿が作られず、その分夜間にも作られるため多尿となるのです。塩分量を1日6gまでに制限し、特に夕食時のみそ汁(1杯約2gの塩分量)は極力控え、1日のオシッコの量を1500ml以下になるような水分摂取を心掛ければ、夜間オシッコの量も減るはずです。

(2)膀胱容量減少  

 泌尿器科疾患が主な原因ですので、専門医を受診してきちんと治療を受けることが改善の近道です。でも自分でできることもあります。それは骨盤底筋体操です。難しいことではありません。肛門を閉める運動あるいは肛門を体の中に引き込む運動、もっとわかりやすく言いますと人前でオナラを我慢する運動です。と言うと「オナラをしてはいけないんですか?」と聞いてくる人がいますが、オナラを我慢する時に使う筋肉を鍛える運動ということです。オナラはしてもいいんですよ。図3に示す4つの姿勢でやりましょう。ひとつの姿勢でなく、時間帯によって姿勢を変えてやることがコツです。立位や座位など姿勢を変えることによって、それぞれに関連した骨盤底全体の筋肉も一緒に鍛えられますのでより効果的です。最近の研究では男性でも骨盤底の血液の流れが良くなって膀胱の大きさが改善し、尿がためられるようになり夜間頻尿が改善すると言われています。

(3)睡眠障害  

 睡眠の問題は厄介です。夜、目が覚めオシッコのことが頭に浮かぶと、その後なかなか寝つけなくなるのでトイレに行かないと気が済まなくなるものです。ここではよく眠るための方法を考えてみましょう。我々には誰でも生まれつき体内時計というリズムがあり、睡眠もそのリズムの中にあります。睡眠には眠りが深くなるノンレム睡眠と眠りが浅くなるレム睡眠があり、約2時間おきに交互にきます。このリズムを調節しているのが脳内の松果体というところで作られるメラトニンという物質です。夜メラトニンが分泌されると眠くなり、朝メラトニンを早く減少させると夜間睡眠のリズムができると言われています。体内のメラトニンを早く減少させるためには太陽の光を体に浴びることです。起きたらまずカーテンを開けて太陽の光を部屋いっぱいに入れましょう。快適な目覚めができれば睡眠も改善するというわけです。午前中の散歩や夜ぬるめの湯にゆっくりとつかることも効果的ですよ。

 夜間、オシッコに何度も起きると翌日の生活に支障をきたしてしまいます。朝、太陽の光を浴び、塩分を制限した食事やアルコール、コーヒーなどを適量にし、骨盤底筋体操を行うことで、かなり夜間頻尿が改善するのではないでしょうか。自分でできることから始めましょう。 

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 次回は福島県で増加している梅毒、性感染症についてです。

月号より