急性冠症候群の症状とは
心臓の筋肉に酸素と栄養を供給している冠動脈の病気で、動脈内腔(ないくう)を狭める内膜肥厚(プラーク)を被う表面の膜が破れて、中の成分が血液に触れることにより血管内に内腔を閉塞する凝血塊(血栓)ができるために起こります。不安定狭心症、急性心筋梗塞(こうそく)、心臓突然死の大半がこのために発生しています。
前胸部がしめつけられるのが特徴的ですが、吐き気、みぞおちの不快感、胸焼け、のどのつかえ感など消化器病と紛らわしい症状も少なくありません。不安定狭心症はこれらの症状の持続時間や頻度が増し、安静時にも症状が出現するようになります。25分持続しますが、20分以上持続する場合には急性心筋梗塞を疑います。通常、突然のこれまでに経験したことのない安静時胸痛で高率に冷や汗を伴います。しかし、高齢者や糖尿病患者ではこれらの症状がでにくいこともあります。
突然胸痛が出現したら
これらの症状が出現した場合にはすみやかに医療機関を受診してください。特に、高血圧、脂質異常症、糖尿病や慢性腎臓病のある人は要注意です。できれば循環器専門病院が良いでしょう。急性心筋梗塞が疑われる場合には救急車を要請すべきです。病院では心電図検査などで診断されます。胸痛をきたす別の病気ではないことも確認した後、緊急で途絶した冠動脈の血流を回復するための治療を受けます。症状が既に消失している場合には薬物治療で経過をみることもあります。
目の前の人が倒れたら
急性心筋梗塞の3、4割は医療機関に到着する前に亡くなっています。その多くは心室細動という不整脈が原因です。倒れて1分経過するごとに生存率が7―10%ずつ低下するため早期の除細動が求められます。
近年、自動体外式除細動器(AED)が多くの場所に配置され、一般の方も一次救命処置(BLS)を学ぶ機会が増えています。その結果、院外で救命される患者さんも増えていますが、さらに多くの方のBLSの習得とAEDの普及・啓発活動が望まれます。
(県医師会員)
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