高血圧や糖尿病など
近年、社会環境の変化や生活習慣の欧米化により、日本人の食生活などが著しく変化しています。その結果、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病や花粉症などのアレルギー疾患を合併症に持つ妊婦さんも増加傾向にあります。今回は、比較的多くみられる疾患についてお話いたします。
妊娠高血圧症候群(旧・妊娠中毒症)とは、妊娠20週以降、分娩(ぶんべん)後12週までに高血圧が見られる場合、または高血圧に蛋白(たんぱく)尿を伴う場合のことを言います。高血圧合併妊婦は母体やお腹(なか)の赤ちゃんにさまざまな合併症を引き起こすため、慎重な管理が必要です。重症の場合は、降圧剤内服はもちろんのこと入院管理が必要です。それでも母体、お腹の赤ちゃんの状態がよくなければ、速やかな分娩が必要です。普段より塩分・カロリーを控えた食生活を心掛けましょう。
わが国の糖尿病人口は急激に増加し、国民病化してきており、糖尿病もしくはその予備軍は6人に1人と言われています。糖尿病の方が妊娠した”糖尿病合併妊娠”と妊娠により糖代謝異常が発症した”妊娠糖尿病”があり、妊娠糖尿病患者は全妊婦の3〜5%です。血糖コントロールが悪い状態で妊娠すると、赤ちゃんの奇形をきたすこともあります。治療法は基本的には食事療法ですが、重症の場合はインスリンの注射が必要です。
甲状腺疾患は、女性に多く、甲状腺機能異常を伴う疾患の合併症は全妊婦の0・2〜0・3%です。甲状腺ホルモンの分泌状態により甲状腺機能亢進(こうしん)症と機能低下症があり、いずれもお薬でコントロールしますが、これが不良だと母体や赤ちゃんに合併症を起こします。
国民の3人に1人は何らかのアレルギー症状を持つと言われています。花粉症にしても気管支喘息(ぜんそく)にしても、一般的には直接お腹の赤ちゃんに影響はありません。治療としてはアレルゲンの除去が基本になりますが、短期間であれば薬物療法が有効でしょう。
以上、よく先生と相談してできるだけ赤ちゃんにいい環境を整えて、元気な赤ちゃんを産みましょう。
(県医師会員)