元野良が大きな福招く 会津鉄道芦ノ牧温泉駅長・小林美智子さん<1>
会津鉄道芦ノ牧温泉駅(会津若松市)が「ネコが働く駅」として知られるようになり、今年で15年になる。会津鉄道の社員ではない私が地域住民に推され、無人駅だった駅の駅長になったのが36年前。半分近くの年月を、ネコと一緒に歩んできた。
駅がある会津若松市大戸地区は温泉街があるものの、過疎化が進んでいる静かな場所。ネコがいなければ、今のように話題に上ることはなかったかもしれない。
野良猫だった「ばす」が、列車のお見送りや駅の巡回をする「初代名誉駅長」になったのは2008(平成20)年4月。前年に三毛猫「たま」が和歌山電鉄貴志駅(和歌山県紀の川市)の駅長に任命され、全国的な人気者になったのがきっかけだった。たまの経済効果は大きく、駅の乗降客だけでなく、和歌山県全体を訪れる観光客が増えた。フランスのドキュメンタリー映画「ネコを探して」で取り上げられることも決まっていた。
「芦ノ牧温泉駅にも、ネコがいるじゃないか」。会津鉄道の社員が冗談交じりに、当時駅で飼っていた元野良猫のばすを「ネコ駅長」にすることを提案すると、とんとん拍子で話が進んだ。もっとも人気が出るかどうか、その時はみんな半信半疑。私も「たまの二番煎じだし、どのくらい効果があるかなあ」と首をかしげていた。
ところが1年もしないうちに、ばすも人気者になり、県内外から多くのネコ好きが駅を訪れるようになった。その後、芦ノ牧温泉駅には2代目名誉駅長の「らぶ」、その弟の施設長「ぴーち」、妹のアテンダント「さくら」と3匹のネコ駅員が誕生。4匹とも多くの人を呼び込む招き猫として活躍してくれた。昨年には4匹が登場する映画「劇場版にゃん旅鉄道」も公開された。たまのように映画になる日が来るなんて、夢にも思わなかった。
この15年、ばす、らぶとの悲しい別れもあった。でも振り返れば、楽しい思い出ばかりだ。ネコと一緒に過ごしてきた日々を振り返っていきたい。(聞き手 高崎慎也)
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こばやし・みちこ 若松女(現会津学鳳)高卒。バスガイドなどを経て、1987(昭和62)年の会津鉄道開業後、30歳で芦ノ牧温泉駅の駅長に就任した。
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