愛着湧いてネコ好きに 会津鉄道芦ノ牧温泉駅長・小林美智子さん<4>
実を言うと、「ばす」と出合うまでの私は、熱心なネコ好きではなかった。
子どもの頃も、自宅でネコを飼ってはいた。ただ、熱心に世話をしていたのは祖母で、私にはこれといったネコとの思い出はない。結婚、出産後にもネコを飼ったことはあったが、長男がぜんそくだったのもあり、ネコを飼っていない時期も長かった。
そんな私が熱心に世話をしたのがインコだ。長男のぜんそくが落ち着いた頃に知人から譲り受け、ひなから大切に育てた。鶏肉も食べられないくらい鳥が苦手だったのに、インコを肩や頭に乗せ、家中を歩いていた。
しかし、別れは突然やってきた。インコを肩に乗せ、外で洗濯物を干していた時のこと。初めて見た青空に感激したのか、突然肩から羽ばたくと、二度と帰ってこなかった。
ばすを駅で飼い始めてからも、ネコとの距離が急速に縮まったわけではない。ばすの面倒を見ていたのは、一緒に働いていた駅員の方。彼女は愛猫家だったので、世話の仕方をいろいろと教えてくれた。でもその頃は、ばすをソファに座らせたり、人間の使う茶わんで食事をさせたりするのが私には信じられなかった。
私は「それは人間が使う物。ネコの物は別」と厳しくしつけた。駅員がアメなら、私はムチ。ばすが駅の売店で売っているイカを食べようとしたので、しかったこともあった。
それでも長く一緒にいると愛着が湧いてくるものだ。ばすの駅長就任と前後して、愛猫家の駅員がけがをしたこともあった。その後、彼女が復帰するまで、新たな駅員と一緒に面倒を見ることになった。私はアメとムチを使い分けられず、徐々に優しく接するようになっていった。
その後「らぶ」「ぴーち」「さくら」の3匹は自宅で飼った。今ではぴーち、さくらが寝室のベッドの真ん中で寝ていると、どかせることができず、私は隅で寝ている。ネコのいない生活は、もう考えられない。(聞き手 高崎慎也)
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