長距離出張も動じない 会津鉄道芦ノ牧温泉駅長・小林美智子さん<8>

 
ウサギ駅長「もっちぃ」と共演したらぶ(左)。いたずらをしないか心配だったが、両手は飾りで、前脚を制服の中にしまっていたので何事も起きなかった

 2代目名誉駅長「らぶ」は、北は仙台、南は東京まで幅広く活躍した。

 仙台から東京、というと「大したことない」と思われるかもしれない。でも、県外出張は初代名誉駅長「ばす」の時には考えられなかったこと。ばすは車で20分ほどの距離にある会津若松市内の動物病院に行くのも嫌がるくらい、乗り物が苦手だった。イベントで会津鉄道の列車に乗った時も大声で鳴いたので、帰りはタクシーに乗ったくらいだ。

 らぶは生後2カ月で芦ノ牧温泉駅に来た頃から、私の車に乗ってドライブに出かけていた。栃木県の動物病院に2時間かけて車で通っていた時期もあり、乗り物に慣れていたので、長時間の移動でも騒いだりしなかった。

 らぶは会津をPRするため、郡山市や福島市など県内だけでなく、仙台など県外にも出張した。ウサギ駅長「もっちぃ」と共演するため山形鉄道宮内駅(山形県南陽市)へ行ったこともあった。その時、らぶには駅長の制服を着せた。初めて見たウサギにちょっかいを出さないか少し心配していたが、制服の中に前脚をしまっていたので平気だった。

 2018(平成30)年9月にはアニメの主人公のネコとらぶが共演。翌年2月にそのアニメを題材にしたゲームが発売され、東京・秋葉原まで記念イベントの応援に行った。

 秋葉原出張のため、車でJR新白河駅に向かう道中のこと。山道を車で走っていると、同行した私の息子が車酔いしてしまった。でも、らぶは平気な顔をしていた。カーブに合わせて体を傾け、乗り物酔いを防いだようだ。その後、新幹線や山手線に乗っても、らぶは周りの目を気にすることなく、すやすやと眠っていた。

 ネコ駅長がらぶに代わってから県外、海外にもファンが増えた。それは若い駅員が、SNS(交流サイト)を使って情報を発信し始めた効果も大きかったと思う。でも、長距離出張にも動じない、らぶのたくましさのおかげであることも間違いない。(聞き手 高崎慎也)