シャイなところが魅力 会津鉄道芦ノ牧温泉駅長・小林美智子さん<9>
「ぴーち」と「さくら」の2匹は、「らぶ」と血のつながったきょうだい。でも2代目駅長にするために譲り受けたらぶと違って、元々は駅員にするつもりがなかった。
ぴーちと出会ったのは2016(平成28)年の秋ごろ。らぶが駅長になった翌年だった。その時は「ぴーちは駅に出さず、家で飼おう」と思っていた。だが、らぶが通院でいない日に「駅にネコがいないと、お客さんががっかりするかな」と考え、ぴーちを代わりに連れてきた。すると驚いたことに、駅利用客の人気者になった。
ぴーちはとっても恥ずかしがり屋。待合室に出しても、すぐに事務所へ駆け込んできてカーテンの後ろに隠れた。しかし、「そんなところが良い」と、らぶファンから「ぴーち派」に変わる人がたくさんいた。「人に会わなくてもできる役職は何かな」とみんなで考えた結果、17年の鉄道の日(10月14日)に「施設長」になった。それから病気で退職するまで2年半ほど駅で働いたが、ぴーちは最後まで人前に出るのが苦手なままだった。
さくらは20年の初めに駅へやって来た。元の家では自力で母乳を飲めなかったようで、生後1カ月なのに両手に収まるくらいの大きさだった。「放っておくと死んでしまうのではないか」と思い、シリンジ(注射筒)でミルクを飲ませたり、水で軟らかくしたネコのご飯を食べさせたりした。すると健康に育ち、その年の4月に「アテンダント」に就任。らぶと一緒に列車のお見送りをするようになった。
さくらも、ぴーちに似て恥ずかしがり屋。列車をお見送りする時も、しばらくはらぶの影に隠れていた。ただ昨年秋、らぶが天国に旅立ってからは、らぶが出演するはずだったイベントに代わりに出るため、さくらが会津の各地を回ってくれた。
まるで「お兄ちゃんが残した仕事は、私がやるわ」と言っているようだった。最初は小さく弱々しかったさくらも3歳になり、頼もしく成長した。(聞き手 高崎慎也)
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