「ドラえもん」に登場する道具の中で一番欲しいのはと聞かれて、「ほんやくコンニャク」と答える人は多いかもしれない。これを食べるとさまざまな言葉を話せて、理解できる夢のような代物。ただ漫画では大抵、誰かが悪用して痛い目を見る
▼パリ五輪を現地で取材した記者に聞くと、スマートフォンの翻訳アプリは、まさにほんやくコンニャクだったらしい。フランス語や英語をはじめとする多様な言語が飛び交う中、開会式を見た市民の声を集めた
▼競技会場までの道を尋ねたり、ホテル部屋の掃除を頼んだりする時もこのアプリ。食事の時には、どんな料理か想像すらできないメニューを日本語に訳して、本場の味を堪能した
▼現地のボランティアスタッフもこのアプリの助けを借りながら、外国からの記者や観光客と交流していた。「日本から来た」と話すと、常に親切に対応してくれたのが印象的で、滞在している間に言葉の壁を感じることはなかったという
▼今年に入り、本県を訪れる外国人が増えている。これから翻訳アプリが役に立つ場面も増えていくはずだ。あとは機械越しの会話の中で、おもてなしの心をどう伝えるか。それができれば、おのずと来訪者は増える。