東京電力福島第1原発事故で津波対策を怠り、会社に巨額の損害を与えたとして、東電の株主が旧経営陣5人に総額約23兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審第5回口頭弁論は19日、東京高裁(木納敏和裁判長)で開かれた。東電の小森明生元常務(71)は本人尋問で「(事故当時)第1原発の津波対策が不十分という認識はなかった」と述べた。
同訴訟で小森氏への尋問が行われたのは初めて。2022年7月の一審東京地裁判決は、小森氏を除く4人に計約13兆円の支払いを命じたが、小森氏については、就任から事故までの期間が短かったなどとして、賠償責任を認めなかった。
小森氏は本人尋問で、最大15メートルを超える津波の試算がありながら対策を講じなかった点を「津波評価には十分な知見が必要で、東電だけで判断するのは難しかった」と弁明。一方で「(今になれば)安全上、原発を止めることも考えないといけなかった」と述べた。
事故前に津波の想定などを話し合った会議や、専門家らの意見を踏まえ「第1原発の津波対策は不可避」とした社内文書については「記憶がない」とした。
原告や被害者への思いを問われ「言葉に表せない被害を与えたことは本当に申し訳なく思う」と謝罪した。
10月25日に木納裁判長らが第1原発を視察する「現地進行協議」を行い、11月27日に結審する。