仕事で付き合いのある方から先日、礼状を頂いた。はがきの表面に手書きでお礼の文章がつづられている。裏面には大きなスイカの絵とともに「水分補給にどうぞ召し上がれ」のメッセージが添えられた絵手紙だ
▼水彩の濃淡を生かした絵をはじめ、内容を考え、文章を書いて投函(とうかん)するまでに相当な手間をかけたであろうことは、すぐに理解できた。清涼感たっぷりの絵に感激しながら、相手のことを思い浮かべて心は温かくなった
▼手書きの良さとは―。言語脳科学が専門の酒井邦嘉さんは「その人の人となりや思索の跡が手にとるように感じられるのだ」と説く(「脳を創(つく)る読書」実業之日本社)。労力を費やした文章は間違いなく相手に伝わる
▼ペーパーレス化が叫ばれる時代だからこそ、紙に残した文字や絵は大きさだったり、筆圧だったり、強調したいことや感情の高まりを表現できるのが大きな強みだ。電子メールやSNS(交流サイト)では、同じ中身でも相手に伝わらないことがある
▼来月1日に値上げされる郵便料金に合わせた新デザインの切手やはがきが、きょうから販売される。値上げは痛いが、それだけ価値のある手書きの手紙を送ってみる心のゆとりを持ちたい。