福島医大大学院医学研究科臨床疫学分野の栗田宜明特任教授らの研究グループは4日、難病「全身性エリテマトーデス」の患者が抱く医師への信頼度を調査した結果、患者と医師が協力して治療やケアを選ぶ方法「共同意思決定(SDM)」の質が高いほど、信頼度が高くなるとの研究成果を発表した。
研究グループは、全身性エリテマトーデスの成人433人を対象に、共同意思決定の質を質問票によって評価。その上で〈1〉主治医への信頼度〈2〉医師全般への信頼度―を1年間、追跡調査した。いずれも質問票に設けた各項目の回答を分析して点数化(0~100点)する方法で行った。その結果、共同意思決定の質の点数が高いほど主治医への信頼度の点数も高くなった。医師全般に対する信頼度も高くなることが分かった。
難病は生涯にわたり通院治療が必要なケースが多いため、医師と患者の信頼関係が特に重要になる。10~40代の女性に多い全身性エリテマトーデスの場合、例えば副作用で顔が丸くなったり、太ったりするステロイド剤の治療を続けるか減らすかを選択したり、妊娠を考えた際に胎児に毒性のある薬を別の薬に変えたりといった共同意思決定の場面が考えられるという。
栗田氏は「治療方針の決め方が信頼度につながることが、経験としてだけでなく、データとして証明できた。医学教育などに生かすことができれば」と話した。
研究成果は、米国のリウマチ学会の学術誌に8月4日付で掲載された。
◇
共同意思決定 従来は、医師が情報を提供して治療やケアの選択を患者に委ねる「インフォームドチョイス」が主だった。最近は、医師が治療やケアについての専門知識を提供し、患者は自身の価値観や好みを伝え、患者と医師が協力して治療やケアを選ぶ共同意思決定が推奨されるようになった。