パリ・パラリンピックの陸上女子砲丸投げ(上肢障害F46)で4位となった斎藤由希子(31)=SMBC日興証券、福島市=は「笑顔で表彰台に立つ」との目標は達成できなかったが、最後まで「笑顔」を絶やさず全力を出し切った。
「家族へ感謝伝えたい」
出産を経て、拠点とする福島市で練習を重ねて臨んだ31歳の晴れ舞台。女子砲丸投げで世界選手権2大会連続銅メダルの斎藤由希子は、3位に27センチ及ばなかった。目標だったメダルを逃した悔しさに、戦い切った達成感が重なり「全部が財産になる」と瞳を潤ませながら語った。
メダル獲得ラインを12メートルに定めたが、1投目は10メートル91と出遅れた。その後は11メートル台前半が続き、5位で迎えた最終6投目。この日自身最高の11メートル61を出すも、表彰台には届かず「主人や子ども、コーチに申し訳ない」とうつむいた。
宮城県出身で生まれつき左肘から先がない。2015年には12メートル47の世界記録を出すなど第一線で活躍したが、競技人口の少なさからパラリンピックでは08年北京大会を最後に3大会連続で実施されなかった。専門外のやり投げで目指した過去2大会は落選。夢のステージで世界のライバル14人と競い「この環境になったことが幸せ」と充実感を口にした。
家族らの支えでたどり着いた舞台でもあった。22年3月に長女千遥ちゃんを出産してからは、体重が15キロ落ちるなど、体力の低下が激しかったが夫でコーチの恭一さん(34)がサポート。パラ陸上の宍戸英樹総監督(福島東高卒)も練習を手伝ってきた。
恭一さんと千遥ちゃんは福島で帰りを待つ。斎藤は「泣いて会話にならないと思うけど、感謝の気持ちを伝えたい」と声を震わせて、産後のトレーニングや子育てを支えてくれた家族との再会を心待ちにした。