東京電力は10日午前、福島第1原発2号機から溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しに着手した。作業ミス発覚による3週間近い中断はあったが、「廃炉の最難関」とされるデブリへの挑戦がようやく始まり、事故から13年を経て廃炉作業は新たな段階に入った。東電は2週間以上かけて格納容器底部にたまるデブリを回収、本格的な取り出しに向けた準備につなげる考えだ。
東電は10日午前6時34分、試験的取り出しに向けた準備作業を再開した。同7時18分には、デブリ取り出しに使う伸縮式のパイプ型装置を2号機原子炉格納容器側面の貫通部に押し込む作業を開始。前回並び順を誤ったパイプの1本目を設置して装置を押し込み、同7時20分に放射性物質を遮断する隔離弁を通過させて取り出しに着手した。初日は約60センチ進んだところで作業を終了。ミスの再発防止のため、東電社員5人が2号機原子炉建屋付近や遠隔操作室から作業に立ち会った。
東電は今後、貫通部に挿入した取り出し装置を計5本のパイプを使い格納容器内に押し込んだ上で、装置先端にある爪形の器具を格納容器底部に垂らし、たまったデブリを採取する予定だ。採取量は3グラム以下を見込む。回収後は原子炉建屋内に設置した設備で放射線量や重さを測定した後、茨城県大洗町の分析機関に運び込み、本格的取り出しに備えてデブリの性状などを詳細に調べる方針だ。
原発事故のデブリは1~3号機に約880トンあると推計されており、廃炉に向けた最大の障害になるとみられている。試験的取り出しは当初、2021年に着手する計画だった。しかし取り出し方法の変更などで着手を3度延期。着手予定だった8月22日には当日の準備作業中に装置を押し込むパイプの並び順を誤る作業ミスが発覚、東電が原因究明や再発防止といった作業の再検討を進めてきた。
今回の試験的取り出し着手により、国と東電の廃炉工程表「中長期ロードマップ」上は廃炉作業が最終段階の第3期に入った。ただ、デブリ本格的取り出しは工法の検討段階にとどまり、建屋解体や放射性物質の処分など課題は山積している。事故から30~40年とされる廃炉の完了は、見通せない状況が続いている。