棚倉町のシンボルとして親しまれている国指定史跡「棚倉城跡」。かつてこの地にそびえていた棚倉城は来年、築城400年を迎える。「歴史ファンへの広がりを含め、町の知名度を高める絶好の機会」と考えた地元関係者が町を挙げた記念プロジェクトに乗り出した。本年度から2026年度までの間、イベント開催などさまざまな取り組みを企画しており、築城400年を機に町の歴史や魅力を全国に発信しようと躍起だ。
日を浴びて涼しげに輝く水堀の噴水、推定樹齢650年の大ケヤキ、豊かな自然―。そんな美しい景観を楽しめる棚倉城跡は現在、公園が整備され、観光客や地元の住民らが集う場になっている。
大きな節目を来年に控える中、町や町商工会、町文化財保護審議会などが6月に記念プロジェクトの実行委員会を発足させた。「城跡では毎年イベントを開催しており、町の活性化につながる大事な場所になっている」。実行委副会長で町商工会長の村越誠さん(63)は棚倉城跡への思いを語る。「400年の歴史の中で先人が残してきた城跡を、町の企業が力を合わせてPRしていきたい」と力を込める。
記念の年を祝う機運を高めようと、町は町内のイベントで棚倉城のPR活動を展開している。10月20日には棚倉城跡で町内の事業者や飲食店などが出店する「たなぐら”まるごと”フェスタ」を開催する予定だ。
町を挙げた盛り上げへ、実行委は記念のロゴマークを作成し、町内にロゴマークが描かれたフラッグを掲げる計画を立てている。歴史講演会の開催や、12月に横浜市で開かれる日本最大級の城郭の祭典「お城EXPO」への出展も準備しており、町の魅力を幅広く売り込むつもりだ。実行委の担当者は「さらなる観光資源の発掘に力を入れたい」と意気込む。(伊藤大樹)
石垣の修復、着々と
棚倉城跡を巡っては、石垣の一部が東日本大震災や本県沖を震源とする21年2月と22年3月の地震で崩落した。崩落した石垣の撤去は終わっており、町は27年度の完成を目指して復旧作業を進めるとともに、石垣の積み直しの工法を検討していく方針だ。町によると、城跡本丸から約150メートル離れた場所に残る石垣3カ所が計約8メートルにわたり崩れ落ちた。来年度は現存する石垣のうち、崩落の危険性がある部分の石を取り出す作業を予定している。