いわき市の水産加工仲卸業のいちい水産は、同市久之浜町の浜風きららに鮮魚や加工品などを販売する直売所を設けた。同社の木村元信取締役(41)は「地域の鮮魚店として、地域の皆さんの日常に魚を届け、幸せを感じてもらえるようにしていきたい」と強い使命感を口にする。
木村さんによると、東日本大震災の影響で久之浜町から鮮魚店がほぼなくなったという。本県沿岸漁業も、東京電力福島第1原発事故の影響で操業を中断した。その後、操業日数や規模を限定して行う試験操業が2012年に始まった。県外に避難していた木村さんは、操業再開が決まると家業を継ぐために地元に戻った。「仲買の仕事は全くの素人だった」というが、周囲の仲買人の力も借りて市場での仕事の感覚を養った。
また、同社は震災後から住民の要望に応えてメヒカリやヤナギガレイなどの干物を受注生産するなど、地域の魚食文化を支えてきた。「港町に鮮魚店がないのはさみしい」。同社は昨年12月、いわき市の久之浜漁港からすぐそばにある複合商業施設の空き店舗に直売店を開店した。新鮮な刺し身を提供すると、常連客に喜んでもらえたという。木村さんは「地域の要望に応えられる場所でありたい」と力を込める。
営業時間は午前10時半~午後6時半(日曜日は同3時)。月、火曜日は定休。問い合わせは同店(電話080・9068・3370)へ。