環境省は17日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌などの取り扱いに関する有識者検討会の合同会議を東京都内で開き、最終処分と再生利用の基準案を示した。安全対策が柱で、検討会は基準案をおおむね了承した。同省は年度内に基準を策定し、全国的な理解醸成に加え、2045年までの福島県外最終処分実現に向けた搬出先の選定などを本格化させる。
基準案のポイントは【表】の通り。最終処分は、管理期間中に周辺住民が受ける追加被ばく線量を年1ミリシーベルト以下と設定した上で、埋め立て終了時に厚さ30センチ以上の土砂で覆い、外部と接する開口部を閉鎖する。
再生利用は、施工者や周辺住民の追加被ばく線量が年1ミリシーベルト以下になるよう1キロ当たり8千ベクレル以下の土壌を使う。現地に表示は設けるが、立ち入り制限は求めない。最終処分と共通して飛散・流出対策を講じるほか、管理終了まで量や濃度の記録を保管する。
国際原子力機関(IAEA)は10日に公表した安全に関する報告書で、目指すべき放射線量の水準について「地域住民や自治体などの利害関係者と相談して決定」するよう求めている。同省は「1ミリシーベルト」の基準は設定した上で、実際は受け入れ地域と個別に協議し、理解を得る方針を示した。
同省によると、除去土壌の保管量は県内1300万立方メートル、県外33万立方メートル。県内分は中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)にほぼ搬入したが、県外では民家や公園など約2万9千カ所で一時保管されている。これまで県内と県外でそれぞれ有識者検討会を設けてきたが、統一基準を策定するため、初めて合同で議論した。
埋め立て実証も報告
会合では、茨城県東海村、栃木県那須町、宮城県丸森町で18年度から実施した埋め立て処分実証事業の結果も報告された。各自治体内で発生した土壌を埋め立てたところ、3カ所全てで飛散・流出や地下への浸透による周辺環境への影響はないことを確認したという。